# Java モジュールシステムとJPMSの仕組みを理解する

## 目次

1. はじめに

2. JPMSの概要

   1. JPMSとは何か

   2. なぜJPMSが必要なのか

3. JPMSの基本概念

   1. モジュール

   2. モジュール宣言 (`module-info.java`)

   3. モジュールの依存関係

4. JPMSの仕組み

   1. モジュールパスとクラスパス

   2. アクセス制御

   3. リフレクションへの影響

5. JPMSでの開発ステップ

   1. モジュールの作成

   2. モジュールのコンパイルと実行

   3. 複数モジュールプロジェクトの管理

6. JPMS導入のメリットとデメリット

   1. メリット

   2. デメリット

7. JPMSの活用例

   1. 実際のプロジェクトでのJPMS

   2. 大規模プロジェクトでのJPMSの効果

8. まとめ

## 1. はじめに

JavaはJDK 9からモジュールシステムを導入し、Java プラットフォームモジュールシステム（Java Platform Module System、JPMS）として知られています。これにより、Javaアプリケーションをモジュール単位で管理することが可能になり、よりスケーラブルでメンテナンスしやすいシステムの構築が可能になりました。本記事では、JPMSの仕組みや利点について詳しく解説していきます。

## 2. JPMSの概要

### 2-1. JPMSとは何か

JPMS (Java Platform Module System)は、Java 9で導入された新しいコンポーネントモデルであり、プログラムをモジュールとして構築することを可能にします。これにより、クラスパスの複雑さを軽減し、アプリケーションの構造を改善することができます。

### 2-2. なぜJPMSが必要なのか

従来のJava開発では、多くのクラスやライブラリが単一のクラスパスに登録されていました。これにより、クラスの衝突やバージョンの不整合が生じ、メンテナンスコストが高まるリスクがありました。JPMSにより、これらの問題を解決することで、より堅牢なアプリケーションの開発が期待されます。

## 3. JPMSの基本概念

### 3-1. モジュール

モジュールは、Javaアプリケーションの独立した単位であり、自己完結型のコードおよびリソースの集まりです。各モジュールは、独自の名前空間を持ち、他のモジュールと明確に区別されます。

### 3-2. モジュール宣言 (`module-info.java`)

JPMSでは、モジュールの構成や依存関係を指定するために `module-info.java` ファイルを使用します。このファイル内で、どのパッケージを公開するか、どのモジュールに依存するかを宣言します。

```java

module com.example.myapp {

    requires java.sql;

    exports com.example.myapp.models;

}

```

### 3-3. モジュールの依存関係

モジュールが他のモジュールの機能を利用する場合、`requires` キーワードを用いて依存関係を明示的に設定します。このような依存関係の明示化により、ビルド時に必要なモジュールが不足しているかどうかを確認できます。

## 4. JPMSの仕組み

### 4-1. モジュールパスとクラスパス

JPMSは「モジュールパス」という概念を導入しました。これは従来のクラスパスに代わるもので、クラス参照の範囲をモジュール単位で制御します。モジュールパスを使用することで、クラスの名前衝突を避け、必要な依存モジュールだけを確実に含めることができます。

### 4-2. アクセス制御

JPMSにより、モジュール単位でアクセス制御が行われ、外部への公開がパブリックであっても制限できます。これにより、アプリケーションコードのセキュリティと整合性が向上します。

### 4-3. リフレクションへの影響

JPMSでは、リフレクションによるアクセスが制限されることがあります。リフレクションでモジュール内のプライベートメンバーにアクセスする場合、モジュールがアクセスを許可しなければなりません。これにより、非公開APIへの不正アクセスが制限されます。

## 5. JPMSでの開発ステップ

### 5-1. モジュールの作成

JPMSを使用するには、まず `module-info.java` ファイルを作成し、モジュールの定義を行います。

### 5-2. モジュールのコンパイルと実行

モジュールをコンパイルする際は、`--module-path` オプションを使用してモジュールパスを指定します。実行時も同様に、`--module-path` オプションと `--module` オプションを使用します。

```bash

javac --module-path mods -d mods/com.example.myapp src/com.example.myapp/module-info.java src/com.example.myapp/com/example/myapp/*.java

java --module-path mods -m com.example.myapp/com.example.myapp.Main

```

### 5-3. 複数モジュールプロジェクトの管理

複数のモジュールが存在するプロジェクトでは、ビルドツール（例：Maven、Gradle）を使用してモジュール間の依存関係を管理します。これにより、コンパイルやパッケージングのプロセスが効率化されます。

## 6. JPMS導入のメリットとデメリット

### 6-1. メリット

- **安全性の向上**: モジュール単位のアクセス制御により、アプリケーションのセキュリティが向上します。

- **メンテナンス性の向上**: モジュール間の依存関係が明確になり、大規模プロジェクトでも管理しやすくなります。

- **再利用性の向上**: モジュールを独立して開発・テストでき、再利用が促進されます。

### 6-2. デメリット

- **学習コスト**: 新しい概念やツールの使用方法を学習する必要があります。

- **互換性の問題**: 古いライブラリの中には、モジュール化されていないものもあり、移行に工夫が必要です。

## 7. JPMSの活用例

### 7-1. 実際のプロジェクトでのJPMS

例えば、銀行システムなどの高いセキュリティ要件を持つアプリケーションでは、JPMSによるモジュール化が有効です。各モジュールを独立してセキュリティテストすることで、全体の安全性を高めることができます。

### 7-2. 大規模プロジェクトでのJPMSの効果

GoogleやAmazonのような大規模な企業においても、JPMSを活用することで、巨大なコードベースの管理を効率化し、新機能の追加やバグ修正の速度を向上させています。

## 8. まとめ

JPMSは、Javaアプリケーションの開発において非常に重要な役割を果たしています。モジュールシステムの導入により、セキュリティ、メンテナンス性、再利用性が向上し、アプリケーション開発がより効率的で安全なものとなります。一方で、学習コストや古いプログラムとの互換性などの課題もありますが、それらを上回る恩恵を受けることができるでしょう。新しいプロジェクトでは積極的にJPMSを検討し、Java開発の新しいスタンダードにしていくことが推奨されます。

Java モジュールシステムとJPMSの仕組みを理解する

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