# C++におけるUndefined Behaviorを理解するためのSanitizer活用法

## 目次

1. はじめに

2. Undefined Behaviorとは

   - 2-1. 定義と問題点

   - 2-2. 主なUndefined Behaviorの例

3. Sanitizerの概要

   - 3-1. Sanitizerの種類

   - 3-2. パフォーマンスへの影響

4. Undefined Behavior Sanitizer (UBSan)

   - 4-1. UBSanの使用方法

   - 4-2. UBSanで捕捉可能な例

5. AddressSanitizer (ASan)とThreadSanitizer (TSan)

   - 5-1. ASanの活用ケース

   - 5-2. TSanの活用ケース

6. サニタイザーの導入方法

   - 6-1. GCCおよびClangでの設定

   - 6-2. Dockerを用いたサニタイザーの利用

7. サニタイザーの効果的な活用法

   - 7-1. CI/CDへの統合

   - 7-2. コードレビューでの利用

8. まとめ

## 1. はじめに

C++は多くのプログラマにとって強力かつ柔軟ではあるが、同時に誤った使用により予期せぬ結果を生む可能性も孕んでいます。そのうちの一つが"Undefined Behavior"（UB）です。本記事では、このUndefined Behaviorの理解を深めるためにサニタイザーと呼ばれるツール群をどのように活用するのかを解説します。

## 2. Undefined Behaviorとは

### 2-1. 定義と問題点

Undefined Behaviorとは、C++の標準において、その動作が定義されない操作を指します。UBが発生すると、コンパイラは任意の動作を取ることができ、プログラムが予期しない結果を生むことがあります。これは、メモリ破壊や脆弱性の原因となり得ます。

### 2-2. 主なUndefined Behaviorの例

- ゼロでの整数除算

- 無効なメモリアクセス（例: 解放済みメモリへのアクセス）

- オーバーフローを伴う符号付き整数計算

## 3. Sanitizerの概要

### 3-1. Sanitizerの種類

Sanitizerは、コンパイラがコード中の問題を検出するためのツールです。これにより、実行時に特定のエラーを特定し、報告することが可能になります。代表的なものに以下があります。

- Undefined Behavior Sanitizer (UBSan)

- AddressSanitizer (ASan)

- ThreadSanitizer (TSan)

- MemorySanitizer (MSan)

- LeakSanitizer (LSan)

### 3-2. パフォーマンスへの影響

通常、サニタイザーはランタイムチェックを行うため、オーバーヘッドが発生します。しかし、このオーバーヘッドは開発段階で潜在バグの検出が可能になる利益と比較すれば相殺されます。一般的には数十パーセント程度のパフォーマンス低下が想定されます。

## 4. Undefined Behavior Sanitizer (UBSan)

### 4-1. UBSanの使用方法

UBSanは、コンパイラオプションを用いることで有効化されます。GCCおよびClangの場合、以下のようなフラグを指定します。

```bash

g++ -fsanitize=undefined -o my_program my_program.cpp

```

### 4-2. UBSanで捕捉可能な例

- 符号付き整数のオーバーフロー

- 動的型の不一致

- 無効なビットシフト操作

例えば、以下のコードは符号付き整数のオーバーフローを引き起こし、UBSanにより検出されます。

```cpp

#include <iostream>

int main() {

    int a = INT_MAX;

    int b = 1;

    int c = a + b; // 符号付き整数オーバーフロー

    std::cout << c << std::endl;

    return 0;

}

```

## 5. AddressSanitizer (ASan)とThreadSanitizer (TSan)

### 5-1. ASanの活用ケース

ASanはメモリエラーの検出に特化しています。主な検出例は次のとおりです。

- バッファオーバーフロー

- ユース・アフター・フリー

### 5-2. TSanの活用ケース

TSanは競合状態の検出に利用されます。スレッド間での非同期動作に起因する問題を特定でき、デッドロックやデータ競合を防ぐ上で非常に有用です。

## 6. サニタイザーの導入方法

### 6-1. GCCおよびClangでの設定

GCCおよびClangはサニタイザーをネイティブでサポートしており、コマンドラインオプションで簡単に有効化できます。それぞれのサニタイザーを利用するためには、適切なオプションを使用します。

- Undefined Behavior: `-fsanitize=undefined`

- Address: `-fsanitize=address`

- Thread: `-fsanitize=thread`

### 6-2. Dockerを用いたサニタイザーの利用

サニタイザーを使用する際に、環境の汚染を避けるためにDockerを利用すると便利です。Dockerコンテナ内で開発およびテストを行うことで、ホストシステムに依存しない実行環境が確立できます。

```Dockerfile

FROM ubuntu:latest

RUN apt-get update && \

    apt-get install -y g++ clang

COPY . /app

WORKDIR /app

CMD ["g++", "-fsanitize=address", "my_program.cpp", "-o", "my_program"]

```

## 7. サニタイザーの効果的な活用法

### 7-1. CI/CDへの統合

サニタイザーをCI/CDパイプラインに組み込むことで、開発途中のコードに潜むエラーを自動的に検出し、品質を保つことが可能です。GitHub ActionsやJenkinsを用いてサニタイザーの実行を自動化することができます。

### 7-2. コードレビューでの利用

コードレビューの段階においてサニタイザーの出力を参考にすることで、レビュワーはより具体的な指摘を行うことができます。これにより、開発者とレビュワーの双方がUndefined Behaviorへの意識を高めることができます。

## 8. まとめ

Undefined Behaviorは一見些細に思えるプログラミングミスから生じ、大規模なバグやセキュリティ欠陥を招くことが少なくありません。これを未然に防ぐために、Sanitizerを活用することは非常に効果的です。サニタイザーを使うことで、コードの品質と安全性を向上させ、本番環境での問題発生を抑えることができます。開発の早い段階からこれらのツールを統合し活用することが、現代のソフトウェア開発における一つの正攻法と言えるでしょう。

C++におけるUndefined Behaviorを理解するためのSanitizer活用法

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