# C言語におけるAddressSanitizerの使いこなし術

## 目次

1. はじめに

2. AddressSanitizerとは？

3. AddressSanitizerの導入方法

   - 3-1. GCCでの導入

   - 3-2. Clangでの導入

4. AddressSanitizerの主な機能

   - 4-1. メモリエラーの検出

   - 4-2. スタックバッファオーバーフロー

   - 4-3. ヒープバッファオーバーフロー

   - 4-4. ユースアフターフリー

   - 4-5. ダブルフリー

5. 使用例と解析方法

   - 5-1. シンプルなプログラム例

   - 5-2. 出力結果の解析

   - 5-3. エラーメッセージの解読

6. AddressSanitizerのベストプラクティス

   - 6-1. 開発プロセスへの統合

   - 6-2. パフォーマンスへの影響

   - 6-3. カスタムアロケータとの相性

7. まとめ

## 1. はじめに

AddressSanitizer（ASan）は、メモリ関連の問題を発見しやすくするための強力なツールです。メモリリークやバッファオーバーフローなど、C言語で特に発生しやすいバグを効率的に検出します。この記事では、ASanの使用方法と、その効果的な活用手法について詳しく解説します。

## 2. AddressSanitizerとは？

AddressSanitizerは、Googleが開発したメモリエラー検出ツールです。主に以下のようなメモリ問題を検出することができます。

- スタックオーバーフロー

- ヒープオーバーフロー

- ユースアフターフリー

- ダブルフリー

ASanは、コンパイル時に特別なフラグを指定してインストルメント化されたコードを生成し、実行時にこれらのメモリエラーを検出します。

## 3. AddressSanitizerの導入方法

### 3-1. GCCでの導入

GCCを使ってASanを導入するには、以下のようにコンパイルオプションを指定します。

```bash

gcc -fsanitize=address -g your_program.c -o your_program

```

`-fsanitize=address`オプションがASanを有効化し、`-g`オプションがデバッグ情報を生成します。

### 3-2. Clangでの導入

Clangを使ってASanを有効にする場合は、GCCと同様のオプションを指定します。

```bash

clang -fsanitize=address -g your_program.c -o your_program

```

どちらの場合も、ASanは動的ライブラリとして機能しており、実行時にエラー情報を報告します。

## 4. AddressSanitizerの主な機能

### 4-1. メモリエラーの検出

ASanの主な機能は、潜在的なメモリエラーを実行時に即座に検出し報告する点です。プログラムの実行中にバグを突き止めることで、エラーを早期に修正することができます。

### 4-2. スタックバッファオーバーフロー

スタックバッファオーバーフローとは、スタック領域で確保したバッファの範囲外にアクセスすることです。ASanはこれを検出し、エラー情報を詳細に報告します。

### 4-3. ヒープバッファオーバーフロー

ヒープオーバーフローは、動的に確保したメモリ領域で不正アクセスが発生したときに起こります。ASanはその発生を特定します。

### 4-4. ユースアフターフリー

メモリが解放された後にそのメモリを再度使用しようとするエラーを、「ユースアフターフリー」と呼びます。この種のバグは特に厄介です。ASanではこうしたエラー発生を効率的に検出できます。

### 4-5. ダブルフリー

一度解放したメモリを再度解放しようとすると、ダブルフリーエラーが発生します。ASanはこれを発見し、詳細を出力します。

## 5. 使用例と解析方法

### 5-1. シンプルなプログラム例

以下のコード例では、意図的にメモリエラーを発生させています。

```c

#include <stdlib.h>

#include <stdio.h>

int main() {

    int *arr = malloc(sizeof(int) * 5);

    arr[5] = 10; // 意図的なバッファオーバーフロー

    free(arr);

    return 0;

}

```

### 5-2. 出力結果の解析

このプログラムをASanでコンパイルし実行すると、次のようなエラー出力が得られます。

```

==12345==ERROR: AddressSanitizer: heap-buffer-overflow on address 0x602000000018

READ of size 4 at 0x602000000018 thread T0

    #0 0x400c7d in main example.c:6

...

```

エラーメッセージは、問題のあるコード行とアドレス情報を提供します。

### 5-3. エラーメッセージの解読

上記のメッセージから、ASanがメモリバッファの境界を超える不正なアクセスを検出したことがわかります。問題の行は`example.c`の6行目であり、これはバッファオーバーフローです。

## 6. AddressSanitizerのベストプラクティス

### 6-1. 開発プロセスへの統合

ASanは開発プロセスに組み込むことで、CI（継続的インテグレーション）の一環として利用できます。この場合、ビルドスクリプトにASanを組み込み、テスト時に自動でエラーチェックを行います。

### 6-2. パフォーマンスへの影響

ASanはメモリのオーバーヘッドを持ちます。実行時のパフォーマンスが低下する可能性があるため、デバッグビルドで使用し、リリースビルドでは無効にすることが一般的です。

### 6-3. カスタムアロケータとの相性

特に注意が必要なのは、カスタムメモリアロケータを使用するプログラムです。ASanは標準のmalloc/freeと密接に働くため、カスタムアロケータを使用している場合には、適切なラッピングが必要です。

## 7. まとめ

AddressSanitizerは、メモリエラーの検出において非常に強力なツールとして位置付けられます。特にC言語において、その利用はバグ発見と品質向上に直結します。本記事では、導入方法から具体的な例、ベストプラクティスに至るまで詳しく解説しました。ASanの活用により、実行時の不安定な挙動を未然に防ぎ、安定したソフトウェア開発を支援することが可能です。この機会に、ぜひAddressSanitizerをプロジェクトに導入してみてください。

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C言語におけるAddressSanitizerの使いこなし術

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