CDOとは?求められる役割やスキル、企業にとっての必要性を解説
2024年03月06日 6:42
今日本では、企業として生き残るためにDX化を進めることが必須となりつつあります。そのためには、企業が一丸となってDXを推進していく体制を作らなければなりません。
もっとも「具体的に何をすれば良いのかわからない」ことから、重要性は分かりつつもDXを進められていないという企業も多いのではないでしょうか?
そのような状況下において活躍してくれるのが「CDO(最高デジタル責任者)」という役職です。本記事では、そもそもCDOとはどのような役職なのか、求められる役割やスキル、企業にとっての必要性について詳しく解説していきます。
CDOとは「Chief Digital Officer」の略で「最高デジタル責任者」もしくは「最高データ責任者」と表現されます。同じような言葉としてCEOやCFOなどが有名ですが、CDOもこういった役職と同じように経営側のポジションです。
CDOは企業のデジタル部門の責任者として、経営側の立場となり、組織のDXを進めていくという重要な役割を担っています。CDOが世界で活躍し始めたのは割と最近のことで、特にヨーロッパやアメリカなどでCDOという役職を正式に設置する企業が増えたのは2010年の半ば頃からです。
なおCDOには、似たような単語で間違いやすい次のような役職もあります。
CDOとの違いやそれぞれの役職の特徴について、以下で分かりやすく解説していきます。
CEOは「Chief Executive Officer」の略称で、企業における最高経営責任者のことを指します。企業全体の業務執行に関して、トップとなる人が就任する役職です。
CEOは、企業の経営に関する全ての責任を負って、最終的に経営に関する重要な判断を下します。日本では、代表取締役社長や代表取締役会長などがCEOを兼務、もしくはCEOと同じような意味を持つ役職です。
CTOとは「Chief Technical Officer」の略称で、企業の技術に関する活動を統括する役職のことです。製造技術や科学技術、IT、研究開発技術など、専門性の高い技術や知識を用いる技術部門のトップとして設置される役職になります。
アメリカやヨーロッパでは比較的馴染みのある役職ですが、日本ではDXの需要が高まるとともに注目されるようになりました。そのため、現在の日本においては特に重要視されるようになってきている役職の一つです。
CTOには、技術や知識など専門分野に関して秀でた能力が備わっていることに加えて、経営という視点から事業戦略的に技術の活用や方針の策定などを行う能力が必要となります。
なお、ITの知識や技術に長けているCTOの場合、後で説明するCIOと同じような役職として扱われるケースも多いです。
CFOとは「Chief Financial Officer」の略称で、最高財務責任者のことを指します。財務に関しての業務執行を統括する役職であり、企業の財務面における経営戦略のトップとして、予算やコストの管理、資金調達を行うのが主な業務です。
CFOには、財務や会計などお金に関する専門的な知識に加えて、企業経営の視点から財務戦略を立案し企業価値を向上させる能力や、資金調達のためのコミュニケーション能力などが求められます。なお、企業によっては代表取締役がCFOを兼任している場合もあります。
CDOと間違われやすいのがCIOです。CIOは「Chief Data Officer」の略称で、企業の最高データ責任者のことを指します。CIOの主な役割は、データマネジメントやデータ分析、企業が保有しているデータの活用促進などです。
一方でCDOの場合、データに基づいて組織の変革や既存のビジネスモデルの変革などに関する経営判断を行います。デジタル部門を統括しつつ、同時に経営的な視点で業務をこなさなければならないのがCDOの特徴です。
CSOとは「Chief Strategy Officer」の略称で、日本語では「最高戦略責任者」という意味を持ちます。外資系企業に設置されていることが多い役職であり、CEOでは対処しきれない経営戦略的なオペレーション業務を行うのが主な役割です。
また、CSOはCEOに代わって、競争優位性の高いビジネスモデルの構築を行ったり、事業ドメインの確立をしたりなど会社経営に関する業務を中心に行うので、設置することで事業戦略に関する意思決定が早くなるというメリットがあります。
CMOとは「Chief Marketing Officer」の略称で、日本語では「最高マーケティング責任者」という意味を持ちます。
CMOの主な役割は、企業のマーケティング活動に関する業務を統括することです。市場や顧客の調査はもちろんのこと、企業としてのマーケティング戦略や策定・実行を行います。
日本でもマーケティングの重要性は認知されるようになりましたが、まだCMOを設置して本格的に取り組んでいるという企業は多くありません。
CxOとは「Chief x Officer」の略称で、「Chief:組織の責任者」+「x:業務・機能」+「Officer:執行役」からなる経営用語です。
一般的には、企業活動における業務や機能の責任者の総称のことを指します。これまでヨーロッパやアメリカの企業で用いられていた言葉ですが、外資系企業やグローバル化を進める日本企業などでも使われるようになりました。
CxOのxの部分には、それぞれの役割や業務の頭文字が入ります。例えば、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高執行責任者)などのように、xに代入される頭文字(E、Fなど)によって職務や職責などが異なります。
CxOは、執行役員や事業部長などと同様に、役員に関する権限や責任に関して法的な裏付けのない役職です。基本的には、組織内での役割や役職名を表すために企業が独自に使用している呼び方となります。
日本においてCDOという役職を設置している企業はどれくらいあるのでしょうか?アメリカやヨーロッパの企業では、CDOを設置している企業が多くなってきましたが、日本ではまだまだ少ない状況です。
引用:総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
総務省が行った「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」によると、アメリカやイギリス、ドイツなどにおけるCDOを設置している企業は16%を超えています。
その一方で、日本は約3分の1にも満たない状況で、CDOを設置している企業はほとんどありません。また検討していると答えた企業の割合も、アメリカやヨーロッパ諸国と比べると圧倒的に少なく、CDOが民間企業にはまだまだ浸透しきっていない状況であると言えるでしょう。
この背景には、日本ではDXの重要性が叫ばれ始めている一方で、まだDXを企業として進めることのできていないところや、ITや最新のテクノロジーに対する投資に前向きではない企業が多いことが挙げられます。
※引用:総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」
総務省が行った調査研究によると、CDOの設置を検討している企業とそうではない企業を比較した場合、設置を検討している企業の方が労働力の強化や雇用に対してCDOに期待している割合が高いことがわかっています。
人材の採用や育成、価値の向上などに関するCDOの役割が果たす重要性は理解していたとしても、なかなか設置に踏み切れていないのが日本企業の現状であると推測することが可能です。
そのため、今からCDOを設置して、戦略組織のDX化やデジタルリテラシーの向上に努めれば、他の企業と差をつけて市場での競争力を高めることもできるでしょう。
CDOが現代の日本社会において必須となりつつある理由として、企業のDX化を推進するためにリーダーが必要であることが挙げられます。またDXだけではなく、最新のテクノロジーやデジタルマーケティングに対応するためにも、デジタル部門を統括するCDOが必須となりつつあるのです。
ここでは、CDOが現代社会において必須となりつつある5つの理由について詳しく解説していきます。
経済産業省は、2025年までに日本の企業がDX化を行わない場合、全体で約12兆円の経済的な損失が生じてしまうことを発表しています。企業としての競争力や経済的な損失を被らないためにも、DXは年々重要性が高まっていると言えるでしょう。
実際に企業がDXを進めることによって、次のようなメリットがあります。
このように様々なメリットがあるので、DXを効率的かつ効果的に進められるCDOは企業にとって必要不可欠な存在になりつつあると言えるでしょう。
上述で解説したように、DXを進めることで様々なメリットがあります。しかし、DXは経営層や現場だけで進められるものではありません。最新のテクノロジーやIT技術を投入することによって、これまでの働き方や業務に変革をもたらしてくれるのがDXです。
そのため、DXには企業全体で取り組む必要があります。一部分の責任者だけで進めてしまった場合、他の従業員から反感を買ってしまうというケースも珍しくありません。
従業員の不満を抑えてDXを進めるためには、企業としてDXに取り組む理由やメリットなどを全従業員に浸透させる必要があります。デジタル部門を統括するCDOであれば、DXを進めるにあたって重要な役割を果たすことができるでしょう。
また、企業としてCDOにDXに関する強い権限を与えれば、トップダウン方式でスムーズに物事を進められる可能性もあります。
独立行政法人情報処理推進機構は、日本企業のdx推進を目的として、日本およびアメリカの企業の企業戦略、人材、技術について調査・分析した結果を「IPAdx白書」として発行しています。
引用:「IPADX白書2023」2023年2月図表1-7|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)
この調査によると、日本ではDXに取り組んでいる企業(「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取り組んでいる」の合計)は69.3%となり、2021年度から13.5ポイント増加したことがわかりました。
ただし「全社戦略に基づいてdxに取り組んでいる企業」に絞って見てみると、日本は54.2%、アメリカは68.1%と13.9ポイントの開きがあります。そのため、まだまだ企業を上げてdx化に取り組んでいるところは少ないことが推察でき、今後さらなる取り組みが必要な状況であると言えるでしょう。
早い段階から全社を上げてDXに取り組めば、同業他社に差をつけてデジタル市場競争から抜け出せる可能性もあります。
近年では、単純に最新のテクノロジーを企業の業務に導入するだけではなく、集積されたデータを有効活用することが重要になっています。データを有効活用する方法ややり方を生み出すのも、CDOの主な役割です。
新しいビジネスを生み出すためには、最新のテクノロジーを活用するのはもちろんのこと、データドリブンな意思決定をすることも重要。もっとも、データ活用をするのは専門的な知識やノウハウが必要となるので、企業として部門を統括するトップが必要です。
CDOを設置すれば、データ活用のトップとして自由で活発なデータ活用を促し、組織横断的な環境づくりをしてくれます。
最新のテクノロジーは毎日のように進化を続けており、多くの企業がデジタル技術を生かした新たなサービスを生み出しています。このような激しいデジタル競争が行われている環境の中で、企業として堅実に成長していくためには、デジタル技術に関する正しい知見を持つことと、デジタル技術で生み出されるサービスへの顧客の反応やニーズを正確に抑えることが必要です。
こういった条件を満たしているスキルを保有しているのがCDOです。CDOは、最新のテクノロジーやデジタル技術に関して専門的な知識や豊富な経験を持っているだけではなく、経営者としての目線も持ち合わせています。
「最新のテクノロジーやデジタル技術を活用して、既存のビジネスモデルからどのような新しいビジネスを生み出せるのか」という企業が常に抱えている問題に対して、CEOは専門的な知識と豊富な経験で答えを出してくれます。
また、具体的なデジタルマーケティングに関する対策についても講じる役割を果たしてくれるので、現代の企業にとっては必要不可欠な存在と言えるでしょう。
CDOには主に次の4つの役割が求められます。
1.社内へのDX導入と推進
2.DXを活用したビジネスモデルの立案
3.社内データの統括
4.社内データの収集・蓄積・保管・活用
それぞれについて以下で詳しく解説していきます。
ここまで何度か触れたように、現代の企業では最新のテクノロジーを活用して新しいビジネスや既存のビジネスをブラッシュアップさせていくことが重要となっています。
しかし、そのようなことを行うためには、最新のテクノロジーやIT技術を活用して業務や企業に対して変革をもたらすDXを進めることが必須です。CDOが担う役割を果たすためにも、まずはDXの導入と推進をして環境を整えることが必要となります。
そのためには、DXを行うことによる企業組織の変革とそれに伴う企業価値の再定義を行わなければなりません。
うまくDXを企業に導入できたら、DXを活用したビジネスモデルの立案を行うこともCDOには求められます。
また、自身の持っている専門的な知識や最新のテクノロジーなどに関するこれまでの経験を活かして「どのようにすれば顧客に対して価値を提供できるのか」ということについて、デジタルを活用した観点からビジネスモデルを立案し、社内だけではなく社外にアピールして企業の価値を継続・向上させる役割も果たさなければいけません。
DXによって効率的に様々なデータが集められるようになったら、データの統括を行う必要もあります。
企業が活動を通じて集めたデータは、何らかの形で他社へ提供されるケースがあります。しかし、その中には絶対に漏らしてはいけない個人情報などが含まれている場合もあるので、問題とならないようにセキュリティ体制や社内データの取り扱い方を定めなければいけません。
最新のITツールなどを導入すれば、驚くほど正確な顧客に関するデータを集めることもできます。しかし、データは集めるだけではなく、うまく活用することも重要です。
CDOはデータの収集方法から蓄積、保管、活用に至るまで、企業全体に対して正確な指示を出すことも求められます。
CDOの設置を考えている企業であれば、外部から人材を採用することも検討しているのではないでしょうか?外部からの採用でも社内人材の登用であっても、CDOに求められるスキルというのはどういうものなのかを把握しておくことが重要です。
CDOに求められるスキルの具体的な例は以下のとおりです。
それぞれについて以下で詳しく解説していきます。
CDOは、社内でDXを進める上で一番の責任を持つポジションです。DXは、最新のテクノロジーを導入してこれまでの業務や社内の文化を変革させるので、場合によっては既存の従業員から反発を受ける可能性があります。
もっとも、DX化を進めることができなければ、企業として生き残っていくことはできません。既存の従業員から反発を受けつつも、企業として絶対に必要なDXやテクノロジーを活用したデータの利用を進めていくためには積極性を持っていることが必要です。
CDOに求められるのはデジタルに関する専門的な知識や経験だけではありません。
DXを進めるために、困難なプロジェクトを円滑に進めることのできる組織運営能力というのも必要となります。
CDOに絶対に欠かせないのが、ITやデジタルに関する専門的な知識です。組織の運営を左右するITやデジタルの活用を統括するポジションとなるので、こういった分野に精通していることが求められます。
ただし、CDOはあくまで組織全体におけるデジタルの活用方法やDXの推進を行う立場であるため、現場で運用に必要な高度な専門知識まで求められるわけではありません。もっとも、導入した最新のテクノロジーやIT技術をどのように活かして、ビジネスに活用するにはどうすればいいのか検討できるだけの専門的な知識は必要です。
組織全体を改革するDXを進めるためには、全社一丸となる必要があります。場合によっては、CDOがすべての部門を統括して、円滑にプロジェクトが進められるようにしなければなりません。
場合によっては、現場の従業員だけではなく、経営層との間でDXに関するすり合わせや実施する施策についてを議論しなければならないでしょう。そういった役割をうまくこなすためには、マネジメントスキルがあるかというのも重要です。
最後に、DXの重要性について指摘している経済産業省が、企業がDXを推進していくにあたって重要な役割を果たすCDOについてどのような考えを持っているのか見ていきましょう。
経済産業省は、DXを成功させるための方向性として「既存ビジネスの効率化や省力化」ではなく「新規デジタルビジネスの創出」や「デジタル技術の導入による既存ビジネスの付加価値向上」が重要であることを指摘しています。
そして、日本企業がデジタル企業へと変革を果たすためには、CDOをはじめとした企業を統括する役職の人たちがビジョンや戦略だけではなく「行動指針(社員全員の取るべきアクション)」も具体的に示さなければならないことの重要性を「DXレポート」という資料の中で述べていました。
このように、DXを推進する大元となっている経済産業省も、企業におけるCDOが果たす役割の重要性を指摘しています。そのため、今後大手企業を中心として多くの企業でCDOを中心としたDX化が進んでいく動きは加速していくでしょう。
この流れに乗り遅れないためにも、まだCDOを設置していない企業は設置の検討とDXの推進を進めていく必要があります。
CDOは、企業のデジタル部門を包括してDXを円滑に進めるためには必須のポジションです。今後企業として生き残っていくためには、DXを進めていくことが必要不可欠であるということが経済産業省によって何度も繰り返されています。
DXを効率的かつ効果的に進めるためには、CDOという役職の設置が有効です。デジタルや最新のテクノロジーに精通しているだけではなく、企業の経営という側面から組織改革を進められるのがCDO。新しくCDOを設置することによって、DXをスムーズに進めることができれば、他の企業との競争に打ち勝ち、新しい企業価値を生み出すことができるでしょう。
CDOというポジションを新たに設置する際は、今回紹介してきたCDOに求められる役割をこなせて、必要なスキルを有している人材を選ばなければなりません。
なお、具体的なDXの進め方や流れ、企業が行うメリットについては以下の記事でも詳しく解説しています。この機会にぜひご覧ください。
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