農業に革命を!IoTで進化するスマートアグリ
2023年11月09日 3:18
昔ながらの農業のやり方が、今まさにテクノロジーによって大変革の時を迎えているというのはご存知でしょうか?
従来の農業では、人間の手作業や感覚に頼らざるを得なかった部分に対して、Iot機器やAI、ドローンなどの最先端テクノロジーを導入する「スマート農業」と呼ばれるやり方が、日本において急速に発展しつつあります。
そこで本記事では、そもそもスマート農業とは何なのかという基本的なところから、Iot機器などを導入したスマート農業を取り入れるメリットや実際の事例についてご紹介します。
農林水産省によると、スマート農業とは**「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」**と定義づけられています。
世界中で急速に開発が進むロボット技術やAI、Iot関連技術をこれまで技術革新が少なかった農業分野に導入。
それにより「農作業の自動化・培われてきた技術や情報の共有・データの活用」を実現することで、作業・生産効率の向上や農家の人たちの肉体的な負担を減らすのがスマート農業の導入目的です。
現在は、農林水産省が主導して、スマート農業の導入を国全体で積極的に推し進めています。既に全国のさまざまな地域で実証実験や技術開発が進んでおり、スマート農業の時代が着々と近づいていると言えるでしょう。
なぜIot機器やAIなどを活用した、スマート農業が日本で求められるようになったのか、その理由としては次のような背景があります。
【スマート農業が求められている背景】
少子高齢化の進行
参入障壁の高さを緩和できるから
過酷な農作業を効率化して負担を減らせるから
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
スマート農業が求められている最大の理由として、日本が本格的な少子高齢化を迎えたことが挙げられます。
日本の農業の担い手は毎年のように減少しており、2022年の時点で農業従事者の平均年齢は68.4歳、70歳以上の人たちが約58.7%を占めるという超高齢化の状態であることが農林水産省の調査によって分かっています。
一方で、新たに農業に挑戦しようという新規就農者はほとんどいない状況です。令和4年の新規就農者は4万5,840人で、前年度に比べて12.3%減少しました。
今後も新規就農者は減少することが見込まれており、日本の農業分野では若者を中心とした新しい人材をどのように取り入れるかが常に課題となっています。
H3:2.参入障壁の高さを緩和できるから
農業に対してやる気のある人や興味のある企業が始めようとしても、ノウハウ獲得の手段が少なく軌道に乗るまで時間がかかるため、参入障壁が高いというのも農業の難しい現状です。
しかし、スマート農業を導入することによって、これまで習得するのが困難だったノウハウや経験などをテクノロジーで補うことができます。
これによって農業を始めるハードルが低くなり、農業に興味があった個人や企業が新規参入しやすくなるというのもスマート農業が注目されている理由です。
これまでの農業分野では、新規参入が難しく労働環境が過酷であることも合わさって、最先端技術を利用した変革が起きにくい状況でした。
しかし、近年急速にテクノロジーが進歩したことによって、スマート農業実現に必要なサービス開発や技術のハードルも下がりつつあります。
こういった背景もあり、これまでは技術革新が起きにくかった農業分野に対して、ビジネスチャンスを見込んでいる企業が続々と参入しているのが現在の農業分野における状況です。
【スマート農業導入によって農業現場に起きている変革の例】
これまでになかった技術が農業分野に導入されて、過酷な農作業を効率化し農家の負担を減らせると期待されているのも、スマート農業が求められている理由の一つです。
lot機器やAIを利用したスマート農業を導入した場合、次の4つのメリットがあります。
それぞれのメリットについて、以下で詳しく見ていきましょう。
Iot機器やAIなどのテクノロジーを利用したスマート農業を導入することで、農作業の負担を大幅に減らせます。
例えば、毎日の田んぼや畑の様子をドローンやカメラで簡単にチェックできるので、わざわざ広い土地を歩き回ってチェックする必要がありません。
何度も繰り返して田んぼや畑の様子を点検する必要がないので、従来よりも農作業に従事する人たちの負担を減らすことが可能です。
従来、農業分野においては、長い間培ってきた経験や技術が重要視されていました。
しかしスマート農業が浸透すれば、熟練の農業経験者からしか学べなかった経験や技術も、カメラで作業記録を残したり、AIでのデータ分析を行ったりできるので、新規参入者でも農業のノウハウを簡単に学ぶことができます。
また、熟練の農業従事者たちのノウハウやコツなども蓄積できるので、これまで農作業の経験がなかったという人でも、スマート農業によって主体的に活動することが可能となるのです。
Iot機器やAI、ドローンなどの最先端テクノロジーを導入することで、これまで難しかった**「農業の自動化」**が実現します。
特に、草むしりや水やりなど、従来は人の手が必要不可欠だった作業に関しても自動化することが可能です。
そのため、農作業従事者の減少が著しい農業分野においても業務の効率が良くなり、全体的な生産性の向上も期待できます。
スマート農業の導入によって、環境への負担を減らせるのも大きなメリットです。
Iot機器やAIなどによって集積されたデータを解析し活用することで、これまで過剰だった農薬の散布を適切なようへ切り替えることができたり、過剰な農業機器の利用を適度なものに切り替えたりすることができます。
Iot機器やAIを利用したスマート農業を導入する場合、次の3つのデメリット・課題点があります。
それぞれのデメリット・課題点について、以下で詳しく見ていきましょう。
スマート農業を導入にあたって、最大のデメリットは導入コストがかかることです。
最新のIct機器やAIを導入する必要があるので、費用対効果を考えながら導入するべきかどうか考える必要があります。
ただし、現在は農林水産省がスマート農業導入コスト低減に向けて、さまざまな農業支援サービスの育成や普及、補助金の給付などを行っています。
そのため、個人の農家であったとしても、現在では部分的にスマート農業を導入することは難しくありません。今後技術の発達や支援制度が整えば、スマート農業をより導入しやすくなる可能性があります。
スマート農業に必須なのが、Ict機器やAIを利用するためのインフラ設備です。
一部の地域では情報通信の基盤が整っていないケースもあり、データ通信を利用するのが難しかったり、GPS情報が正しく表示されなかったりといった問題を抱えています。
ただし、5Gや衛星通信技術の発達は著しく、今後インフラ整備の問題は改善される可能性が高いと言えるでしょう。
既存の農家では、スマート農業に必要な最新鋭設備を扱える人材がおらず、技術的な参入障壁が高いというのも大きな問題と言えます。
スマート農業が求められている背景のところでも述べたように、現在の農業従事者は約6割近くが60歳以上です。
最新機器やデジタル技術に慣れていない人たちも、Iot機器やAIを簡単に取り扱えるようにすることは、スマート農業を浸透させるために避けられない課題と言えるでしょう。
実際にIot機器を利用したスマート農業の導入事例について、農林水産省が公開している実践プロジェクトを見ていきましょう。
【スマート農業の導入事例(畜産・水田作・施設園芸)】
上記は、畜産・水田作・施設園芸におけるスマート農業の導入事例とその結果についてです。
Iot機器やロボットトラクター、データを駆使した栽培などを行うことによって、労働時間の10%以上の削減や早期の栽培技術習熟、産地全体での収穫量の増大などを実現しています。
【スマート農業の導入事例(露地野菜、地域作物(茶、さとうきび))】
引用:スマート農業をめぐる情勢について|農林水産省
上記は、大規模農園における露地野菜や地域作物において、スマート農業を導入した事例とその結果についてです。
ドローンや自動収穫機の導入、ロボットによる茶園管理などによって、人手不足の解消や農作業の負担軽減を実現しています。
現在の日本では、まだスマート農業は国を上げて普及を進めている段階です。
コストの問題や扱える人材不足といった課題はありますが、Iot機器やAIを導入した実証実験では成功と言える結果を出しています。
また、農林水産省は「人口減少化においても生産水準が維持できる生産性の高い食料供給体制を確立するため」に、スマート技術などの新技術について国が開発目標を定め、産学官連携を強化して開発を進めることを発表。
また、令和5年6月2日に行われた「第4回食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」においては、岸田総理大臣が「スマート技術の開発やサービス事業体の育成などを促進する仕組みを創設する」との発言を残しています。
今後、技術開発や新サービスに対する支援はより充実していくことが予想されており、スマート農業が日本で発展していく可能性は高いと言えるでしょう。
今回は、スマート農業が求められる背景から、導入するメリット・デメリット、実際の投入事例について解説してきました。
スマート農業を導入することで、人手不足の解消や作業効率の向上などさまざまなメリットがあります。
一方で、導入するにあたっては、コストや最新技術を取り扱える人材が不足しているなどの課題を抱えているのがスマート農業普及にあたっての現状です。
しかし、今後より技術が発展してスマート農業が日本に浸透していけば、新たな農業の形が生まれるかもしれません。
日本の農業分野を左右するかもしれないスマート農業について、今後も注目していきましょう。
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