突発的なアクセス流入に備えるシステムの負荷対策まとめ

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2025年04月10日 13:40

目次

  1. はじめに
  2. 突発的なアクセス流入の主な原因
  3. アクセス負荷対策の基本原則
  4. ケース別の負荷対策戦略

 4-1. テレビやSNSでの紹介(バズ)時
4-2. 新サービス公開・リリース直後
4-3. キャンペーン・セールの開催時
5. 技術的な対策一覧と具体例
5-1. CDNの活用
5-2. キャッシュ戦略
5-3. オートスケーリング
5-4. レートリミットとアクセス制御
5-5. 非同期処理・キューの導入
5-6. サーキットブレーカーとフェイルセーフ
6. モニタリングと事前予測の仕組み
7. まとめ


1. はじめに

突発的なアクセス増加は、ウェブサービスの成長において避けては通れない課題です。特にテレビ番組での紹介やSNS上のバズ、新サービスのローンチなどで一時的なトラフィックが集中し、システムがダウンしてしまうケースも少なくありません。本記事では、そうしたアクセス爆発に対する対策を、状況別および技術別に詳しく解説します。

2. 突発的なアクセス流入の主な原因

原因トリガー例特徴
テレビやWebニュース紹介地上波、ネットメディア掲載急激なモバイルアクセスが集中する
SNSバズTwitter, TikTok, Instagramの拡散拡散から数分でピークを迎える
新サービスリリースプレスリリース、公式サイト告知想定以上の注目が集まりやすい
キャンペーン・セール限定販売、先着順プレゼントなど時間帯が偏り、瞬間的に集中する

特にSNS経由のアクセスは事前予測が難しく、数分で数万リクエストが集中することもあります。

3. アクセス負荷対策の基本原則

突発的な負荷に対抗するには、次の基本原則を守る必要があります。

  • 冗長性(Redundancy):単一障害点を避け、複数ノードに分散
  • スケーラビリティ(Scalability):垂直よりも水平スケーリングを優先
  • 可観測性(Observability):モニタリングとログ分析を強化
  • 段階的展開:フルリリースではなく、カナリアリリースやABテストの活用

これらの原則を軸に、サービスの特性や利用者の動向を踏まえた構成を設計していきましょう。

4. ケース別の負荷対策戦略

4-1. テレビやSNSでの紹介(バズ)

  • 静的コンテンツはCDNを利用し、バックエンドを守る
  • 流入元(referer)を特定し、特定ページにリソース集中させる
  • トップページは完全静的化し、バックエンドを介さない構成に

4-2. 新サービス公開・リリース直後

  • ローリングリリースカナリアリリースで段階的に公開
  • アクセス集中を避けるため、時間差配信や地域分散を活用
  • フィーチャーフラグで公開範囲を動的に制御できるように

4-3. キャンペーン・セールの開催時

  • アクセスの事前予約・事前登録制度を設けることで分散
  • セール開始直後にキュー制御を導入し、1秒あたりのリクエスト数を制御
  • リトライや多重リクエスト対策としてCSRFトークン一意セッションを導入

5. 技術的な対策一覧と具体例

5-1. CDN(Content Delivery Network)

サービス名特徴
CloudflareDDoS防御、Bot対策も可能
AWS CloudFrontLambda@Edge連携が強力
Akamai高速な配信とエンタープライズ向け

5-2. キャッシュ戦略

  • ページ全体のキャッシュ:HTMLを含めて静的生成
  • APIキャッシュ:RedisやMemcachedでTTL制御
  • ブラウザキャッシュ:Cache-Control, ETagの活用

5-3. オートスケーリング

サービス特徴
KubernetesPodレベルの自動スケール(HPA)
AWS AutoScalingEC2やECSに対するスケール制御
GCP Cloud Runコンテナ単位のオートスケーリング

メトリクス(CPU使用率、リクエスト数、レスポンスタイム)をトリガーに設定。

5-4. レートリミットとアクセス制御

  • IP単位、ユーザー単位でのリクエスト制限(nginx, envoy, API Gateway)
  • WAFによる攻撃遮断とBot制御(AWS WAF, Cloudflare Firewall)
  • 「429 Too Many Requests」のハンドリングを丁寧に設計

5-5. 非同期処理・キューの導入

  • メール送信、PDF生成、SNS連携などはジョブキューに移行
  • RabbitMQ、Amazon SQS、Sidekiqなどを用いる
  • バックプレッシャー機能で過剰なジョブ投入を制限

5-6. サーキットブレーカーとフェイルセーフ

機能利用例
サーキットブレーカー外部APIがエラー多発時に一時遮断
フォールバックレスポンスDB接続不能時にキャッシュやダミーデータを返却
リトライ制御一定回数のリトライであきらめる(Exponential Backoff)

6. モニタリングと事前予測の仕組み

主要ツール

  • Prometheus + Grafana:インフラメトリクス可視化
  • Datadog / NewRelic:APM、ログ、RUM統合
  • Sentry / Bugsnag:例外検知とトレース
  • Google Analytics / Looker Studio:マーケデータ連携

予測と自動対策

  • BigQueryやRedashで過去トラフィック傾向を分析
  • SNS API(XやInstagram)からバズ検知モデルを構築
  • KubernetesのVPA(Vertical Pod Autoscaler)やHPAで対応

7. まとめ

突発的なアクセス流入は、正面から受け止めるのではなく「仕組みで逃がす」のが正解です。

  • 静的化やCDNを活用し、トラフィックの8割をオフロード
  • 可観測性を強化し、異常を即座に検知・通知
  • フェイルセーフやキャッシュ戦略を取り入れ、ダウン時もUXを維持

技術と運用の両面から、予測可能で柔軟に対応できるアーキテクチャの構築が求められます。今後は、生成AIによる負荷予測やトラフィックシミュレーションの導入も現実味を帯びてきています。

準備が9割。突発的な瞬間も、冷静に乗り切るための設計を今日から始めましょう。

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